【配信限定】扉の向こうは、甘くて、苦い。

Story

1年前、今の町に住み始めたあなた。
引っ越したての頃に偶然出会った喫茶『リアン』は、
今では週に何回か訪れるほどお気に入りの場所になっている。

昔から町の人に愛される『リアン』は、先代から通う常連客が多い。
その中にまざりながら、店の雰囲気やコーヒーを味わうのが好きになっていた。
そして、店主・橘莞治（たちばなかんじ）といる時間も。

ある夜、残業を終えていつもより遅い時間に店へと向かったあなた。
店に入ってから、すでにラストオーダーの時間は過ぎ、閉店まで間もないことに気付いた。
慌てて帰ろうとするあなたを、莞治は引き留める。

「実は俺、お昼食べてなくてお腹空いてるんだ。
だから、帰る前にココでつまんじゃおうかと思ってて。
……よければ、付き合ってくれない？」

こうして、誰もいない店でふたりになるのは初めてのこと。
カウンター越しではなく、隣の席に座る莞治。話す距離も目線も、話題も……いつもと違う。
つい、言ってしまいそうになる。
特別なのは、この店だけじゃないことを――